土砂降りの雨とぼく
悲しくても人は涙を流さないこともあるのだと、私はあいつを見て知ったのだと思う。
獣の命が一つ散ったところで、特別な想い入れがあるわけじゃない者にとってとても些細な事。ましてやこの戦乱の世、日常茶飯事に死ぬのは人も同じだ。同族を失って泣き喚く者達を私は知っているから――私達や先輩達は本当によく知っているから、尚のこと。
だからといって泣かないあいつは、決して悲しい訳じゃない。
毒虫の墓の前で涙する後輩をそっと慰めている時だって、励ますように笑うけど。凛々しい眉毛が八の字になっていることは、多分、あの後輩だって気付いているのだ。
泣けばいいのに。
お前だって子供のくせに、何でいつも笑って誤魔化そうとするのだろう。
私とあいつの共通点なんて、同じ学年の同じ組ってことだけだった。
たったそれだけの細い繋がりは多感な時期を五年もの間共に過ごしていれば、強固なものとなる。その中に含まれているものの類は、きっとあいつと私では少々事情が異なることも知った。
――いや、おかしいのは私の方なのだろう。
あいつは、八左ヱ門は、私を親友としか思っていないというのに、胸底に宿ってしまったのは懸想以外の何物でもなかった。
級友として、仲間として、真っ直ぐな感情を向けてくるあの笑顔へと慢性的な情欲を抱くなんて。
愚かなのは、私なんだ。
なのに。
なのに、だ。
そこまで理解していながらどうして私は、八左ヱ門を目で追いかけることを止められないのだろう。
将来は忍として生きる自分達に、こんな感情邪魔でしかない。
泣きたいのに泣かない八左ヱ門は、もしかすると私よりも早くそんな未来を見つけ出してしまったからこそ、頑なに笑い続けるのだろうか。
愛でていた鷹が死んでも、山道で罠にかかった猪がもがき生き耐える時も、飼っていた兎が食卓に並んでも――あいつは、ぎゅっと唇を噛み締めてじっと昇華されていった命を見つめるのか。
あの震える拳を握る勇気を振り絞れないまま、私は何度悔しさを押し殺せばいいのだ。
――今日は、あいつが拾ってきた子犬のお葬式。
冷たい雨が降っていて、肌に突き刺さる。
小さな毛むくじゃらは濡れそぼり丸まったまま雨よりも冷たくなっていた。
あいつはそれを見下ろしたまま、級友達の慰めや同情を耳にしながら何も話さなかった。
塗れた頬は流さない涙を私に突き付けるけれど、それだけだ。
伸ばしかけた手は届かないまま。八左ヱ門の肩に触れることさえできないまま、鈍い動作で下げられた。何か言いたげな雷蔵の視線が気にかかったが、私はそちらを窺うこともせずにじっと俯く背中を見つめ続けた。
何もしようとしない――できない私を見かねて、「この子を見送らないと」と雷蔵が小さな声で八左ヱ門に告げる。
多分、私よりも長い逡巡の末に導き出した言葉だったろう。八左ヱ門と同じように無言のままだった雷蔵の声音は、少し掠れてしまっていた。
彫像のように動かなかったあいつは、止まっていた時間を動かし出して、雷蔵の言葉にようやく背中を押されたように突然しゃがみ込むと子犬を優しい動作ですくい上げた。
子犬を精一杯守っていた大きな掌は、昇っていってしまった魂を必死でかき集めるように縋る勢いで子犬を抱いた。
微かに伏せられた眼差しを浮かべたその横顔を、私はただ見ていることしかできなかった。
雷蔵に促されてこの場から離れていく背中を、ぼんやりと見送ることしか――。
「誰がやったんだよっ!」
八左ヱ門と雷蔵の後ろ姿が完全に見えなくなると、唐突に私の後ろにいた兵助が感情のままに憤った声を爆発させた。
それまで静かだったから私はこいつがどんな顔をしていたのか気付けなかったけれど、驚いて振り向けば周りの連中に敵意を剥き出しの鋭い眼差しを突き刺していた。
低い兵助の怒声にたじろぎ、級友達はさざめくように一歩身を引いた。それは単なる怯えでしかないはずなのに、兵助はますます肩を怒らせて裏切り者を糾弾するかの如く吐き捨てる。
普段は穏やかな黒々とした眼差しが、激情に駆られて真っ赤に染まっていた。
泣くのをずっと耐えていたのかもしれない。
「俺の目は誤魔化されないぞ! 八左ヱ門に謝れ、謝れよっ!」
「兵助、落ち着けよ!」
長い黒髪を振り乱して叫ぶ兵助を、誰かがそっと宥める。
あいつは何度かそうやって激しく言い募っていたが、やがて息を荒げて今度は隠さずに悲しい嗚咽を漏らした。
やるせない空気がその場に残っていた私達の間に漂っていく。
あの子犬は怪我をしていた。
それを、八左ヱ門が拾って手当してやった。
最初の内は内緒にして飼育小屋の隅で世話していたようだったが、委員会で多忙な八左ヱ門を見かねたろ組のみんながその役を買って出た。そこから隣の組にも話が伝わって、八左ヱ門と仲の良かった兵助も楽しそうに子犬と遊んでいる姿を私もよく見かけていた。
――私だって、雷蔵だって。
少なくともこの場に集まっている五年生はみんな、一度くらいはあの茶色い毛玉と戯れた思い出がある。
だから子犬は元気そうに見えて、傷が完治したわけではないのも知っていた。
そんな中、塀の外へと放してしまえばどうなるのか想像できない奴はいなかっただろう。最低限の散歩だって学園の中で行っていた。
でも、遺体を発見したのはは裏々山へと続く山道の真ん中なのだ。
門を越えなければここまで走ってはこられない――誰かが、子犬をわざと放さなければ来れるはずのない場所。
泥だらけの彼は必死に匂いを嗅いで私達を追いかけてきたのだろうか。それとも拾われた場所で母親を捜しにきたのだろうか。
彼の決意が何だったのか人間の私には理解できないけれど、演習帰りに見つけてしまった現状の皮肉さにただ嘆息ばかりが零れる。
怒ってもどうにもならないのは兵助にだって分かっているはずだ。だが浮かんだ感情の矛先を何処へ向ければいいか、何も言わない八左ヱ門を想うが故に言葉が発露されてしまったのだろう。
子犬は八左ヱ門のものではなかったが、誰だって彼が一番熱心に面倒を見て、懐かれていたのを認めている。世話はしていてもずっと学園内で飼っていくことは難しいので貰い手を外に探していたから別れは近かったから名前だってつけてはいなかった。そうしようと決めたのは八左ヱ門自身であり、情に深い彼のその優しさをみんなが知っていたから、子犬は“八左ヱ門の”という枕詞が付随して私たちの中には刻まれていた。
別れが来ればこの日々も思い出に変わるだろう。八左ヱ門は少し寂しがるかもしれないが、それでもそれはもっと先の話だと思っていたのに。
こうして唐突なほど無慈悲に終止符は打たれた。
兵助だって誰かを責めれば解決できるだなんてこれっぽっちも思っていない。誰かに責任を押し付ければ、少なくとも今感じている悲しみを薄めることができるだろうという安易な自己満足に逃げたかっただけだ。
だからこそ兵助は今こうして泣いている。
純粋に、可愛がっていた子犬を亡くした事実に涙を落とし――きっと八左ヱ門が抱えているだろう喪失感が、自分の比ではないことに心を痛めているのだ。
でも、私は泣けなかった。
八左ヱ門に対して泣けばいいのにと思うのに。
私は、小さなあの命が失われて寂しいとは感じるというのに、決して泣きたいほどの悲しみを感じなかった。
それは八左ヱ門に対する裏切りだろうか。
私は本当に――あいつの事が好きなはずなのに、どうして兵助のようにあいつを想ってやれないのだろう。
ああ、雨はまだ止まないのか。
* * *
「落ち着いたのか?」
叩き付ける雨音と湿気に沈む長屋の一室から出てきた人影へ声をかけると、私が来るのが分かっていたのかそいつは疲れたように苦笑いを浮かべた。
「うん……兵助のやつ、泣き疲れたみたい。子供みたいだ」
そういって閉め切る前の戸の中を見せてくれる。
薄暗い室内で布団を掻き抱きながら突っ伏している黒髪の頭をちらりと眺め、そこに顔を埋めて声も漏らさずに泣いていたのだと分かると遣り切れない気分になる。ずっと黙って側にいてくれた勘右衛門に安心したのか、先程まで歪んでいた横顔は少しだけ穏やかになっていて静かな寝息を繰り返している。
普段は感情を大きく揺さぶられたりはしない冷静な面のある兵助だが、その心が実はひたむきで一途なのを私は知っている。涼しい顔をしながらも八左ヱ門に劣らず激情家だ。故にあいつは、誰かが八左ヱ門を裏切ったのだという考えが頭に浮かんでしまった瞬間、鬩ぎ合っていた悲しみと怒りを耐えることができなかったのだろう。
「……まだ子供でもいいんじゃないか」
「……そうだな。まだ、大人でもないもんな」
音をたてぬように戸を閉めた勘右衛門は、私の独り言に対して律儀な返事を返して笑う。
その目元もほんの少し赤らんでいるのが見えて、兵助を見守りながらこいつも泣いたのだと知る。
無意識の内に私は自分の目尻を探ったがそこは貼り付いていたはずの雨粒も乾いてしまい、奇妙な程に滑らかだ。
――だってこれは私の顔ではないのだから。
「八つ当たりだって反省していたから大丈夫さ。でも八左ヱ門がいなくてよかったな」
「ああ、雷蔵も」
「……きっと必要以上に気にしてしまうだろうからな」
長屋の廊下は通夜のように静まり返っていた。
実際同じようなものだとぼんやり思いながらも、私は勘右衛門の話に頷いた。
すると相手は一瞬だけ眉を顰めたのが分かったが、すぐにその複雑そうな顔を戻して会話を続ける。私の目は誤魔化されないが、勘右衛門も分かっていてそのような表情を浮かべたのだろう。それが余計に不思議な気分にさせられた。
「お墓には晴れたらみんなで行こうって。心の整理が必要だもんな」
いつものようににかりと笑った勘右衛門の頬は少し硬かった。
それが柔らかくなるには時間が必要だ。それぞれに思うことはあるだろう。私にも、あいつにも。
勘右衛門は自分自身にも言い聞かせるようにして、私にそう告げてくれた。
「そうだな……じゃあ私は、雷蔵の所に行って――」
「三郎」
みんながめいめいに自分の中の悲哀と向き合っている中、それを感じない私は荒野に放置されたような孤独を感じていた。
八左ヱ門は泣いたのだろうか。泣けたのだろうか。
今、この瞬間にも胸の奥底に思い浮かぶのは恋い慕うあいつの後姿だったけれど、ちっとも泣いた顔は想像できなかった。つまり私はそれを、多分目にしたことがないのだろうとすぐに腑に落ちたが。
普段はすぐ感情を露わにしてくれるというのに弱味を発露してくれない八左ヱ門にやはり私は、泣けばいいのに、と思った。
どこか上の空だった事を察せられたのか、勘右衛門は真剣な声音で私の名を呼んだ。
何故だろう。
少しだけ尖った声色をしている。
「お前、どうして八左ヱ門に会おうとしないんだ」
踵を返しかけた背中に突き刺さった言葉。
私の耳に先程までうるさいくらいに届いていた雨音は、形のない空白で途切れてしまう。聞きたくなかったはずなのに、その名前を私はどうしたって無視することができないのだ。
「さっきからずっと名前すら出さない。あの時だって、八左ヱ門の隣にいたくせに……どうして声もかけなかったんだ?」
――どうして?
――どうして、だろう。
「……まあ、いいや。雷蔵にも伝えておいてくれよな」
しばらく私の顔をじっと見つめていた勘右衛門は、そのまま廊下の反対側へと歩き出した。
その背中が見えなくなるまで動けなかった。
愚かな私は八左ヱ門に触れる事すら躊躇する。あいつの眩しい笑顔を見るたびに、切ない眼差しを見かけるたびに、泣こうとしないその佇まいに苛立ちさえも浮かぶというのに。
こんな気持ちを知る前に戻れたのならば。
今、この時も。
小さな命を亡くした八左ヱ門の肩を抱いて慰めているだろう雷蔵のように、優しさと慈しみを持ってして理想の親友であれたのだろうか。
「三郎、兵助のところに行っていたのかい」
重い足取りで部屋へと戻ると、案の定雷蔵はそこにいた。
濡れ鼠から着替えたはずの白い指先がそれでもまだ黒い土汚れが爪先に入っているのは、子犬の身体を手厚く葬ってやったからだろう。一緒にいただろう八左ヱ門の姿はここにはなく、落胆のような、安堵のような、奇妙な虚脱感が私に襲い掛かってきた。
崩れるように座り込むと、雷蔵は神妙な顔付きでこちらを見つめている。
「勘右衛門が、墓参りは晴れたらみんなで行くって」
「分かった。そうだね、その方がきっといいよ」
雷蔵は深く頷くと、湿気を吐き出すために開け放してある戸から覗く外の様子を窺って一つ溜息を吐き出した。恵みの雨だとはいえ、やはり気が滅入ってしまうのは天気のせいもある。
泥だらけになりながら墓穴を掘っただろう雷蔵は、何も出来なかった私などよりもずっと気を落としていた。八左ヱ門と共に子犬を最後まで見送ったのだから当たり前だ。
隣で同じ作業を続けていただろう八左ヱ門は何を言っていただろう。どんな表情をしていたのだろう。兵助のように泣いていただろうか。勘右衛門のようにそれを雷蔵は受け止めてやっていたのだろうか。
尋ねたい気持ちはあったが、あの時、見ている事しかできなかった私にそれを聞く権利など存在するのかと思うと舌が動こうとはしない。
雷蔵は微かに視線を私の方へ戻すと、言葉に詰まったかのように口を何度か開閉させて呼吸する。帰って来た時には真っ直ぐに私を見ていた視線がうろうろと彷徨っていて、何事か言い出すのを迷っているのだと察せた。
「何だい雷蔵?」
促してやる私の声には淀みなんて欠片もない。
同じ顔、同じ仕草を共有する目の前の相棒には何だって素直に差し出せてしまうというのに、何故私は同じことを八左ヱ門にできないのか。
そうすれば優しくできるはずなのに。勘右衛門にあんなこと指摘されずとも、こんな心底が冷え切ったような居心地にならずに済んでいただろうに。
私の卑しい思考を読み取ったかのように、雷蔵は厳しい顔つきになった。
勘右衛門の顔に似ている。
或いは、周りを糾弾してしまった兵助のような。
哀傷と焦燥が混沌とした、言葉にできない憤りを堪えた瞳を直視できずに私は目を逸らしてしまった。
嘘をついているつもりなんてない。
けれど私は、息をつくのと同じくらいに自然と人を欺いてしまう。そういう生き方をすると決めてしまったから今さら覆りようもない。
それでもこの温かな学園にいる間だけでも、心を開いた人々へ同じくらいの優しい気持ちで答えていたいと願っている。
中でも一等、雷蔵は大事な存在だ。彼に糾弾されてはその呼吸さえ忘れてしまうかもしれない。
だからいつだって彼のくれる真摯なものに対しては、対等の思いで答えたかった。
でも、八左ヱ門が絡んでしまうとそれさえもできなくなってしまうと気付いてしまった。
私は本当に愚かなのだ。
自身で立てた誓いすらも裏切るような真似をしてしまう。
今だって、雷蔵に本当の事を話せずに隠そうとさえする。
彼の言いたいことは分かっているのに、浅ましいまでに分からないふりをしようとしている。
みんなが私を天才だの何だのと囃し立てるけれど――私は私自身に静かに絶望していた。
「八左ヱ門に会わないの?」
言いたい事は様々にあるのだろうが、雷蔵は努めて平静を保ち、静かに尋ねてきた。迷うことの多い友人ではあったが一度聞こうと決めたのならば、途中で投げ出したりはしない。
私は逃げ出したい気持ちを抑え付けて、どうにか言葉を返した。
ここで背を向けたら、きっと雷蔵は一生許しはしないだろうと漠然と感じていた。
「……会っても、何も言えない」
閉ざしていた唇を開くとみっともないほどか細い声が漏れた。
ああ、私の弱虫めが。
本音を言えば、黙って命の死と向かい合っている八左ヱ門を見るのが、ただひたすらに怖いのだ。
泣かないままにそれを見詰める八左ヱ門が何を思っているのか、知りたいようで知りたくないのだ。
「私は臆病なんだよ雷蔵。正面から向き合うのが怖いんだ。泣かない八左ヱ門に、泣けない私が何を言えばいいというのだい?」
私はあいつに恋をしてから、あいつを自分の中の尊いものの高みへと追いやってしまっていた。人間として出来損ないであろう私が、その場所と同じ高さに立って見つめ返すことがどうしてできようか。
命が散って悲しいとは思う。
でも私には分からない。地の底にいる私は空から降ってくるだろう八左ヱ門の涙の雨の色を知って、ようやくその重みに気付けるのかもしれない。
「でも、悲しみの度合いなんて涙で決まるものではないよ」
「うん……それは分かっている」
八左ヱ門だって悲しいのだ。
でも耐えるのだ。
だっていつか命は終わるものだから。それは必然で巡る自然の淘汰でしかないとあいつは知っているから。
だから何もかもを慈しんでくれる優しさと強さを持っている。憂いを知るからこそ太陽のような笑顔を湛えてくれる。
あいつは泣かない。
大事な何かを失っても涙を流すことはない。
私が死んでも――。
「――ああ、何だ」
私はようやく気が付いた。思い出した。
そうして無意識の内に失笑を浮かべてしまう。何とも醜悪で歪な笑みだったことだろう。雷蔵と同じ顔を被っていなければそれはそれは酷い顔だったに違いない。
それを見た雷蔵が微かに背筋を震わせて、呆然と悲壮感を滲ませた表情で佇んでいたが、それさえも私の愚かさを顕著にさせるものにしか思えず一層惨めになった。
ただ私は八左ヱ門に泣いてほしかったのだ。
あいつが悲しくないはずないと分かっていても、目に見える証明としてその涙が欲しかった。
恋人や情人といったそんな爛れた間柄でなくとも、友として大事な人として失って悲しんでいてほしかっただけだったのだ。
一つの命が終わっただけだと思われたくなかった。
未練がましく自分の冷たい身体に泣いて縋ってほしかった。
いつか来るだろう血生臭い世界の中で、たった一つ真実になるだろう証を見たかっただけだった。
憐れな境遇の子犬に自分を重ねてみて、みんなから愛されて八左ヱ門に愛されて――抱いた願望は膨れ上がってついには私は“私”を殺そうとしたのだ。そうして死んだ存在が愛されていたのだと確証が欲しくて。
愚かなのは私だ。
八左ヱ門は何も悪くないのに。
あいつの心を何よりも傷付けたのが私自身だと思うと、虚しさと悲しいくらいの優越感が込み上げてきて吐きそうになった。
終わり
2015/04/07
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