どうしてこっちを見てくれないの。

 どうしてこっちは見てくれないの。



 時々、彼は遠巻きに自分達を見ている時があった。
 いつもだったら馬鹿騒ぎするのも、喧嘩するのも彼と自分なのだけれども――本当にたまに、彼はふと輪から外れていることがある。

 彼の青い空色の瞳。
 その色とは対照的な情熱を、自分に向けていることは痛いほど知っている。自分はそれを無下にしたり、本気で嫌になったりすることはあるけれども。

 ――何処を見ているんだ、なんて聞けるわけがない。

 愛しているといったのは本当は俺ではないのだろう、なんて嫌な考えばかりが過ぎる。
 女々しくて愚かしい思考ばかりが湧いては消えて。耐えることと叫びたい衝動の擦れ違いによって生まれるのは、どうしようもないほど苛立ちと焦燥感だけ。

 お前は俺を見ているんだろう?

 だったら何でこっちを向いてくれないんだ。

 そんな風に、まるで自らが求めているような台詞が脳裏に過ぎる。その度、無意識のうちに頬に朱が差した。
 そして自覚する。
 自分は本当は、彼に惹かれているのだ。
 愛しいと愛を謳う彼を邪険にしながらも、その目が遠くを――きっと荒れ果てた祖国へと――向けられていることが我慢なら無いのだ。

 青い花咲く薔薇の棘が、胸に微かな傷を生む。
 痛いといえば気付くだろうか。いっそ、泣いて縋ればいいのだろうか。

 方法が分からないまま、自分は彼の眼差しをただ眺めているだけ。
 きっと見ていることを彼が知れば、彼は幸せそうに笑いながら気障な言葉を並べるのだろう。
 そして自分は――己を視界に納めてくれる現実に、醜いほどの満足感を得るはずだ。
 それくらいに。
 絆されても良いのではないだろうかと思うくらいに。
 彼に囚われた自分が、ここにいるから。


 なぁ、ゼロ? こっちを向いてくれないか?

 もうきっと、後戻りができないほどお前が好きなんだよ。




Y o u r E y e s




 -END-



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君と僕の12のお題のお題「君の瞳に映るもの」より。

自分の仲間を見て、ラクロア時代の仲間を思い出しているゼロを見て、ちょっぴり嫉妬…な話。
ゼロ爆のような爆ゼロのような…。一応ゼロ←爆のつもりです。
(2007/12/07)



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