+++ This Very Day +++



 調整作業中にガンダイバー達は首を傾げていた。
 S.D.G.の女性職員達がしきりにそわそわとしている。
 誰か聞いてみないのか、と七人がそれぞれを肘でつついた。結果、1号が主任に尋ねてみた。

「今日はバレンタインデーなのよね!」

 カタカタと入力しながら言われた言葉に、七人揃って首を傾げた。
 作業に没頭しながら踊る主任にそれ以上尋ねることも憚れ、ガンダイバー達は色々と想像を巡らせていた。



 一方、こちらはテスト中のガンイーグル。
 いつもどおりに颯爽とネオトピア上空を飛行していた。
 気持ちの良い風に目を細めながら、平和を満喫する都市を見下ろす。
 町は華やかな装飾が施され、妙に女の子が多く外出している様子が見えた。

 不思議に思ったガンイーグルは、サイバー越しで拡大して見た。すると彼女等は色とりどりの包みを持って駆けて行った。
 ますます首を捻りながらも、時間が迫ってきたので大人しく基地へと戻った。

「調子はどうかしら?」

 ジュリに尋ねられ、絶好調だとガンイーグルは笑う。
 それから、先程見てきた光景を思い浮かべ、率直に聞いてみた。

「なぁジュリさん。今日って何かあるの?」
「今日は14日ね。バレンタインの日よ」

 ガンイーグルは返ってきた返答を何度も頭の中で繰り返す。
 バレンタインの日。すなわちバレンタインデー。
 数分唸ってから聞いてみようと振り返ったガンイーグルだったが、生憎ジュリは他の仕事へ移動してしまった後だった。



 調整が終了したガンダイバー達は、早速自分よりも稼動が早かったガンイーグルの元へと集まっていた。
 勿論、先程覚えた言葉の意味を尋ねるべく。
 七人に一気に詰め寄られ、知らないとは言えないガンイーグルはたじたじしていた。

「あーそのーバレンタインっていうのは……」
「いうのは?」
「その……えーっと――あ、シュウト!」

 流石に限界を感じたガンイーグルは、基地に来ていた特別隊員を目聡く発見した。
 何故かガンダイバーに囲まれている彼の姿を不審そうに眺めつつ、シュウトは近くまでやって来た。
 その手には、ラッピングされている箱や袋が乗せられていた。

「そ、それ、どうしたんだ?」
「これ? S.D.G.の皆から貰ったんだ。今日はバレンタインデーだからね」
「バレンタインデーって何ですか?」

 シュウトの言葉に素早く反応して、今度はそちら側に七人一斉に動いた。
 助かった、と心の中で呟いたガンイーグルだったが、しっかりとシュウトの話には聞き耳を立てておく。
 知らなかったと分かればカッコ悪い。

「君達は初めてなんだね。えーっとどういう風に説明すればいいのかな」
「何をする日なのですか? 誰かにお祝いする日ですか?」
「クリスマスとは違うのですか?」

 疑問がどんどん湧くらしく、ガンダイバー達の質問の嵐は止まらない。
 それに慌てながらもシュウトは一つ一つ説明をしてくれた。

「好きな人や感謝したい人に贈り物をあげる日なんだ。ネオトピアでは女の子が贈るのが主流かな」
「何を贈るのですか?」

 うーんと少し唸ってから、シュウトは自分の持っている包みの一つを持ち上げて見せた。

「お菓子が一般的かな。あと花束とか手紙とか贈る人もいるよ」
「男が贈ってもいいのか?」

 今まで蚊帳の外だったガンイーグルも混ざり込んできた。
 七人の壁の間からぬっと顔を出されたため、シュウトは思わず驚き飛び上がった。
 そんな少年には頓着していたいのか、ガンイーグルはさっさと答えろと言わんばかりに見つめてきた。

「外国だと男の人からも贈るらしいけど――」
「おっしゃあ! 行くぜダイバーズ!」
「了解しましたっ!」

 どたばたと音を立てて、一人と七人が走り出した。
 蜘蛛の子を散らしたように一斉に密度が薄くなり、シュウトは唖然としてその場に立ったままだった。
 まるで台風みたいだと呟き、それからはっとした。

「もしかしてホワイトデーもセットで教えた方が良かったのかな……」

 これから一ヵ月後の同じ日に、同じ目に合うような気がしたシュウトは、悪い考えを振り切るように首を振った。
 大丈夫だと自分に言い聞かせながら。



 この日S.D.G.基地では、工作をするガンイーグルとガンダイバーズの姿が各所で見られたという。
 不器用ながら作られたカードは、全てきちんと飾られた。一際派手なカードはキャプテンに贈られ、換装リングの格納庫の隅に貼られた。



 もちろんシュウトの予感が的中するのは時間の問題であるのは、神のみぞ知る。











 -Happy St. Valentine's Day!-




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どっちかで宜しかったのかもしれませんが、イーグルもダイバーズも出しちゃいました…。
イーグルはダイバーズのお兄ちゃんというイメージが強くて仕方ないです;
ホワイトデーもシュウト君は一人と七人に囲まれること間違い無し(笑)
(2005/02/25)

バレンタイン企画でのお持ち帰りは終了しております。ありがとうございました!(03/08)



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