彷徨う君に、一人ぼっちの君に、
僕は何だか自分を見ているようで哀しくなった。
I transparent saw light
「嘘だ、嘘だ……」
ひたすら広がる闇の中、弱々しく嘆く少年。
飲まれかけた橋の上で彼は一人孤独に泣いている。
それを、同じ容貌の少年が楽しげに見下ろしていた。
『あれがお前の未来。近くない将来に必ず起きる』
「違う! 違うっ……」
また一つ闇が濃くなり、少年の周りを浸食していく。
遠くで彼の仲間が必死に助けようとしているが、彼は自分の殻に篭り見せられた世界に苦悩する。
これが、あの方のやり方なのだな。
第三者として傍観すると、何て明白なのだろう。
これは懐柔であり脅迫であり、毒を仕込んだ大きな罠。獲物を捕らえて自分の操り人形にするための狂言。
仲間を信じて止まない少年を、こんな絶望のどん底に突き落とせるくらいだ。
世間知らずで生まれたての機械人形など、赤子の手を捻るくらいに簡単なことだったろう。
異空間を彷徨う間、自分の世界では誰かが今と同じように必死で名を呼んでくれていたのかもしれない。
見捨てないと言って初めて手を繋いでくれたあの人のように、本当は皆自分を必要としていてくれたのかもしれない。
今更、確かめようの無いことを信じてもどうしようもないのは分かっているけれど。
では自分が確信を持って、この目で見たといえる彼らの絆は?
ソウルドライブの光こそが真実を謳っている。
嘆き悲しみながら、全力で少年を助けようとする人々の声もまた同じだ。
そして何より少年自身が、同族ではない彼らと敵対し合う世界を拒否したのだから。
それだけで今の自分には十分なのだ。
透明な指先を、彼の肩先に当てても透けてしまうだけ。
それでも構わない。
ジェネラルから庇うように、彼の隣に佇んだ。
気付いているかい、シュウト?
周りは全て闇に包まれて、ジェネラルの狂気の心に飲み込まれていった。
けれど君の蹲っているその橋だけは、いつまでも消えていないだろう。
シュウト。
真っ直ぐな君ならば、きっと彼らの真実の声が聞こえるはずだ。
だって橋が見えるのは、君が光を抱いているから。
君自身が輝いているからこそ、絆の輝きも失われることはない。
その光はソウルドライブと同じように、自分を信じて燃やすものだから。
遠くであのヒトが、そうしたように。
自分には出来なかったことだけど、きっと君なら出来るはずだから。
もう一度、信じる心を思い出して――。
割れた影の世界を脱し、切り開く未来を見出したシュウトは、そこで笑ってくれている白いモビルディフェンダーの姿を確かに見た。
四人で手を繋いだ時、後ろの方で誰かが微笑んだような気がした。
ありがとう、と照れ臭げに。
-END-
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vsジェネ戦の時、どうしてシュウト君の周りは見えたのか。
自分が光っているから周りが見えるというわけで、マドナッグ視点で書きました。
もう死んでしまっているけれど、あの中ではマドナッグが助けていてくれたのではないかと思います。
シュウト君の望んだ未来、本当に思い出すだけで泣けてくる;;
(2005/12/24)
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