君色に染めさせて
政宗の胸に電撃が走った。
自分の雷で打たれてしまったかのように、言葉にできない衝撃が全身を駆け巡る。
夢か幻か、現実として目の前にいるはずの想い人の姿に眩暈が起きそうだ。
「何だ? ……似合わぬのならばそう言うがよい。我自身、重々承知しておる」
唖然としたまま固まってしまった政宗から、元就が居心地悪げに視線を逸らす。そう言いながらも不貞腐れた横顔には、少しだけ落胆の色が浮かんでいるように見えたのは惚れた欲目からか。
常に翠緑で覆われていた彼が今その身に纏うのは、醒めるような蒼一色。
己の装束を一度見下ろし、それから再び顔を上げれば変わらず同じ色彩がそこにある。
痩身を纏う具足がどんな色であれ、彼の中の研ぎ澄まされた魂を覆うには変わりが無い。だが同系の寒色である緑を着こなす元就には、やはりというか青もなかなか似合う。
そういえば少し前は白地に赤紐の美しい装いであったな、と不意に思い出してしまい、政宗は顔中にじわじわと熱が集まってくることを感じた。
だってこれではまるで――。
「へ、変じゃねえって! 俺は似合っている、と、思……う……」
慌てて出した声が上擦り、照れ臭さからやがては尻すぼみになっていってしまう。
ますます元就は不審そうに眉を顰めてじっとこちらを窺っていたが、その言葉が茶化したわけでも冗談で言っているわけでもないことは伝わったのだろうか。
ほんの少しだけ口角をつり上げて、「そうか」だなんて嬉しそうに頷くものだから、政宗は身悶えしそうなむず痒さを覚えた。
似合っているとか似合っているとかは問題じゃなくって。
その色を選んで着た理由に、自惚れてもいいのでしょうか。
「Oh, My darlung! Let's marry!!」
「……はぁ?」
- END -
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短いですが、とにかくこれは書いておかないとと思った次第。
(2009/6/22)
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