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■「絆の森」あとがき(改訂版)(2006.03.28)

 本編読了ありがとうございました。
 本作「絆の森」は2003年の夏頃から書き始めた代物でした。今から思えば、誤字脱字は激しいは、表現が可笑しいはで、かなりやばい物だったと認識しています。
 が、当時の自分の精一杯なのだろうと思い、修正・改訂を行いました。もう少し分かりやすくするため、第八話の後半は加筆修正部が多くなりましたが。

 第四話の序文、「撃鉄の硬質な音がやけに大きく聞こえた」の件から生まれた本作ですが、そこから様々な設定がとつとつと浮かびました。
 自分なりの世界観を突き詰める作業が私は好きです。
 「絆の森」もまたファンタジーとしてはポピュラーな森という場所を舞台にしていますが、ランス達の日常は冒険や未知との遭遇があるわけではありません。
 人にとって異様な場所である大樹海は、彼らにとっての家であって生きる場所です。
 自然と共生しながら逞しく生きる人が見る、ちっぽけながらも大きな世界。そういったものが表現できていればと思います。

 自分らしさを失わずに生きることを選択しながらも、最後にはその運命に飲み込まれるランス。彼を盲目的に慕いながらも、水面下では様々な感情を抱いているクゥナ。打算的でもありながら真っ直ぐな想いを持つカイナ。心を押し殺して銃を構えたシュラン。そして、傍観者であり続けるリビア。
 彼らの心の動きは、世界の中に何かをもたらしたわけではありません。
 それでも、彼らなりの答えが確かに存在していることを伝えられればと思います。


■余談・キャラクターについて(2005.05.17)

「ランス」
 私の作品は「少年らしさ」というのが外せない要素なのですが、ランスは一番それが強かったのかも。
 兄との確執や少女達との触れ合いなどによって成長しつつも、本来の自分を見失わない。本当は一番大人びているのかもしれません。
 天秤の話に持っていく前の、彼の森の生活が書いていて楽しかったです。

「クゥナ&カイナ」
 妖精=ティンカーベルという貧相な想像力により、生まれた彼女等。
 似てない双子だけれど、根本は同じで、自分達には無い物を持っていたランスに惹かれたのは必然なのかなと思ってます。
 でもカイナは森を抜けた以降、シュランが気になっていそうな気がします。大人同士というか何と言うか。クゥナはいつまでもランスのお姉さんかもしれません。

「リビア」
 この人の容姿、説明するのが難しかったです。強いのか弱いのか男なのか女なのか、さっぱり分からない謎の存在として確立させたかったのですが……。
 天秤の左側ということで、一応ランスの片割れ。悟り気味なのは人間として生きたランスと違い、天秤としての意識の方が大きかったのでしょう。

「シュラン」
 ランスの義兄。天秤の守人の一族、最後の生き残り。
 八話に彼の行動の理由を全て詰め込むのは、流石に暴挙だったと反省。
 冷たい感じがする人なのですが、脆かったり迷ったりとランスとは少し違う意味での人間らしさを出したかったです。

「ドゥライセン」
 三人の移動手段? 狼のような狐のような……もののけ姫の犬神のような獣を想像して頂ければ。最終的にシュランの相棒のような、そんな雰囲気になってほしいですね。

「ミヤ&ティアル&ストレィ」
 主人公が男だからか、ゲストキャラは女の子になりがちです。
 一話と二話は、森の体制とか生活風景とかを重点にしていたので、あまり深い意味はございません。
 二話の最後辺りを読むと微妙に分かると思いますが、二つの話は繋がっています。一話完結型を目指したので、時系列をわざとバラバラにしたのですが……分かりにくいですね……。


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